「人外-ジンガイ』ご感想

人外に寄せて ご感想/劇評

 

 

2021年4月に上演した
「 人外 -ジンガイ-」


ご観劇いただいた皆様より頂戴したご感想を
紹介させていただきます。

 

 

第  三  弾


新派  文芸部  

 藤雅文


 

「人外」は王道の伝奇物語だ。
神話的猟奇世界を現代に甦らせた乱歩、横溝の宇宙からさらに変異した、グロテスクにして切ないロマンだ。
石橋の宇宙は、日本の「物語」の遺伝子で満ち溢れている。
大衆演劇、歌舞伎、小劇場と乱戦を戦い抜いて来た石橋の世界には、抜きがたい血の匂いがする。
それは、日本人の魂を鷲掴みにする「宿命の物語」という、血の匂いだ。

 

 

「人外」は、「人」と、「人ならぬ人」の物語だ。
しかし、人を人たらしめているものとは、何だ?
人と思い込んで生きて来た私たちは、ほんとうに、人か?
「人」という宿命を生きる私たちは、ほんとうは、「人に似たなにか」に過ぎないのではないか。
そう思う自分の背後に、もう一つのパラレルな世界が黒々と立ち上がっている。
振り向いてはいけない、見てはいけない......幾度も自分に言い聞かせながら、それでも、振り向かずにはいられない。
「人外」とは、そういう物語だ。

 



第  二  弾


俳優

剛士




赤い闇に呑み込まれ自分を失いかける時、闇に生きながらもその闇と対峙し台詞を吐く俳優たちの圧巻の演技が、自分が観客であることを思い出させてくれた。かろうじて目撃者でいられた「人外」

 



第  一  弾    


能楽狂言方和泉流二十世宗家

 泉元彌


 

座席に座り、間も無くの暗転…

覗き込んだ闇は想像以上に深くて…黒くて…

人が、家が、コミュニティーが孕む闇とは

ここまでか!…と、

なんとも心地の悪い作品でした…

 

それなのに…心地良い!?

 

舞台上に菱形に置かれたステージ。

時折、立てられる柱。

怪しく赤い縄と紐。蠢く影。

限りなく削ぎ落とされた最小限の装置で

最大限の効果を上げ、

行き来する時間、

目まぐるしく変わる場面を表現し、

綿密に入り組んだストーリーながら

客席の一人も置いてきぼりにしない。

 

音響、照明、ストーリー…

様々な衝撃が奇を衒わずに配されていて、

これが凄い。

明かされては深まる謎。

怖いもの見たさでのめり込んでしまう。

 

極めて自然に、でも確実に

吟味された言葉、丁寧に紡がれた会話で、

綺麗に広がり深められていく物語。

 

全てが計算された間。

その上に敷かれたレールに

いつの間にか乗り込んでいたようです。

 

話が加速度的に転がっていく後半

沈黙、暗転、転換、

次に起こることへの期待から

体は前のめりに。

 

その展開、この演劇空間が心地よくて…

間違いなく!絶対に‼︎心地悪い物語なのに…

もっと浸かっていたいと思ってしまう。

 

 

 

 

ラストでは、

人が持つ闇…それ以外…いや、

それ以上のドス黒い闇…底無しかと思った

その底に、

極めて黒に近い赤を見たような気持ちになった。

永く澱んだ血のような赤。

 

 

感染対策のため、

面会禁止であったことに感謝しました。

観劇後の感動を、複雑な感情を

演出家、出演者に伝える言葉が見つからない。

中途半端な感想を伝えたくない!

そんな思いにさせてくれた舞台。

 

石橋直也くんの頭の中にある

巧みな世界を、更に膨らませて

私に見せてくれた役者陣に

心からの拍手を送ります。

 

是非!皆さんも

じっくり見て、

しっかり噛み締め、

消化しようと頑張ってください。

そして、

消化しきれない程の

人間の感情に襲われてください。

 

僕は、

あの感覚をもう一度味わいたくて、

そして願わくば、

あの複雑な感情を紐解く鍵を見つけたくて、

何度も見返してしまいそう…

そんな映像ならではの贅沢を満喫する予定です。

 



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